卒業アルバムに写る彼女の下には「吉田奈津子」と表示されている。

 携帯で探してみると同じく「吉田奈津子」のアドレスがインプットされていた。

 あから順番に探していたら、どれだけ時間がかかっただろうか……。

 弟よ、ありがとう。

「電話、してみようかな」

 通話ボタンを押そうとするのを正樹が止める。

「待て。俺がなっちゃんに説明するから」

 彼は私から携帯を取り上げ、自宅の電話からかけると言って部屋から出て行ってしまった。

 無愛想だが、なかなか気が利くやつじゃないの。

 写真の量を考えると、奈津子とは高校時代から今まで随分仲良くしていたようだ。

 一番身近な女友達だったに違いない。

 アルバムを眺めていると正樹が部屋に戻ってきた。

「明後日、うちに来てくれるって」

「そっか。ありがと」

 奈津子と会えば、何か思い出せるだろうか。

 目覚めてからというもの、全く記憶が戻る様子はない。

 私は半ば、記憶が戻ることを諦めていた。