「何か思い出したの?」

 眉間にしわを寄せる正樹に、私は写真を突きつけた。

「この子、誰? たぶん今でも友達だよね」

 高校時代の写真と旅行の写真。

 正樹は「ああ」と言って床に座った。

「なっちゃんだよ」

「なっちゃん?」

「名前は何だったかな? えーっと、たしかナツコ」

「苗字は?」

「知らない」

 役立たずめ。

 なんて言ってはいけないか。

 そのナツコに聞けば何かわかるかもしれないし、連絡がとりたい。

 名前だけを頼りに、携帯を操作してみた。

 400件ほど入っているアドレス帳では、見つけるのも容易ではない。

 それでもあ行から順番に名前を探していると、突然正樹が声を上げた。

「あ! みつけた」

「ビックリさせないでよ……」

 彼が手に抱えているのは、高校の卒業アルバム。

 バカ弟、意外に賢いかもしれない。