写真を見ても、何一つ見覚えがない。

 幼い時期の写真に度々登場する男は、恐らく父親。

 どことなく、正樹に似ているかもしれない。

 だけど父のほうが愛想は良かったようだ。

 何も思い出せないまま、本棚から引っ張り出したアルバムに手をかける。

 高校生くらいの写真が多いな。

 撮りたい盛りだったのだろう。

 私は見た目に派手な女だったらしい。

 高校生のくせに、金髪だ。

 不良だったのか?

 友達と楽しそうに、バカみたいな顔をして笑っている。

 彼氏はいなかったのか、それとも別れて捨てたのか、男と写っている写真はなかった。

 社会人になってからの写真は非常に少ない。

 仕事を始めたからか、撮る機会が減ったのだろう。

 最も新しい写真は、旅行へ行った時のものらしい。

 あれ、一緒に写っている女に見覚えがある。

 何かを思い出したというわけではない。

 高校時代の写真によく写っていた女と、同じ顔をしていたからだ。

「正樹! 正樹ー!」

 部屋のドアから正樹を呼ぶと、ダルそうにこちらにやってきた。

 少しは記憶喪失の姉に気を使えよ、バカ弟。