コンコン

「入るよ」

「どーぞー」

 ドアを開けて、私は部屋に入った。

 彼はベッドで漫画雑誌を読んでいた。

 それを閉じて起き上がり、足だけを床に下ろす。

 私は適当に場所を見つけて座り、何も知らないような顔をして笑った。

「どうしたの、ここに来るなんて珍しいじゃん」

「うん、ちょっと話があって」

「話?」

 訝しげな顔をした彼は、ベッドから降りて床にあぐらをかいて座った。

 小さいテーブルのタバコに手を伸ばし、一本取り出す。

 そのテーブルにはもう一種類別のタバコが置いてある。

 おそらく、旧・紀子のものだ。

 日に焼けた肌がライターのスイッチを押す前に、私は話を切り出した。

「堕ろした子供、あんたの子だったんだね……正樹」

 彼の動きはピタリと止まった。