灰色の空を見る度､現代世界の
真っ青な空が懐かしく思える｡

何とも思っていなかった｡
空は青いとしか思わなかった｡

空が青いということも忘れて
しまいそうだった｡

駿怜は空が好きだった｡
いつも綺麗な空を見ると､写真に
撮っていた｡


有夢という名前を付けたのは
駿怜だった｡

彼の仕事は殺し屋だった｡

台湾のマフィアに雇われていた
駿怜は捨て犬同然のように､
道端に捨てられていた有夢を
拾い､彼女を育てた｡

マフィアから逃げるように日本
に来て､アルバイトをしながら
有夢を育てていた｡

将来､どんな時でも夢の有る､
夢を持てる人間になるようにと
駿怜は名前を付けた｡

駿怜と血の繋がりが無いことを
知りながらも､有夢は駿怜を実の
父のように慕った｡

有夢が中学に入学し､しばらく
した頃だった｡

マフィアに見つかった駿怜は
殺された｡有夢に､必ず帰って
くると言い残して……

彼は心優しい殺し屋だった｡