有夢は荷物をまとめ終え、時間
を潰していた。ポケットから
シルバーのドッグタグを出し、
手首につけた。

幼い頃、育て親である駿怜から
貰った物だ。

ゴールドとシルバーのセットで
有夢はゴールドの方を駿怜に
渡し、彼は嬉しそうに肌身離さず
着けていた。

有夢は外の景色を見つめた。



1年前、有夢と佑行は修学旅行
帰りのバスの中で事故に遭った。

目を覚ました2人が目の当たり
にしたのは、不毛な地と灰色の空
が広がる異様な風景。

状況が呑み込めず、慌てる2人
を助けたのが、利恩だった。

そして、彼から全てを聞いた。

2人は現代から遥か未来に飛ば
されたということ。

彼もまた、現代から未来に飛ば
された有夢達と同じ世界の住人
だということ。

夢のような話だったが、夢では
無く、現実だった。


帰る方法も見つからず、この世界
に飛ばされて、1年が経った。

現代で自分達が死んだのだと
したら、帰る先も無かった。

利恩も事故に遭って、この世界
に飛ばされた。その為、3人は
この世界で貴重とされている
純粋な人間なのである。