教室を見渡せば、空席が目立つ。

空席の多くが、兵士として戦争
に行った者であり、亡くなった
生徒も少なくない。

毎日、多くの人の死を見過ぎて
泣くことを忘れてしまった。

生きる意味さえも見失いそうに
なる毎日なのだ。
生きるだけで精一杯だった。

戦争による空襲に加え、暴走を
始めた殺人兵器の襲撃。

今日は無事でも、明日は死ぬ
かも知れないという恐怖に常に
縛られ、感情を失った。

「有夢!!」頭を小突かれ、佑行
が目の前に現れた。

有夢が今まで生きてこれたのは
彼の力があったからだろう。

笹本佑行は有夢の幼馴染みで
親友である。何度も、有夢は佑行
の前向きな姿勢に助けられた。

「利恩さんが来いって。俺とお前
で施設に。今から行くか?
授業、面倒だしな!」佑行は前の
席に座り、言った。

有夢が小さく頷いたのを確認
すると、佑行は笑顔で頷いた。


利恩は2人の先輩であり、国の
人間である。この建物内では、
結構上の方の立場にある人物
らしい。

役所へ行き、ロビーで待っている
と利恩はすぐに現れた。

公務員で役人でもあるくせに、
髪を茶色に染めている利恩を
佑行は尊敬しているらしい。