沈黙の中、静かに息を飲んだ。


あたしの心はひなたと一緒に居たい一心だった。




「……茶番だったが仕方あるまい。顔をあげろ」


ひなたと顔を上げて真剣な眼差しで老婆を見る。

老婆は涼しい顔であたしとひなたを交互に見て口を開いた。



「娘、犬は返すと前に言ったはずだ。犬、好きに生きるがよい」



その一口で緊張の糸が一気に切れた。

気が付くと目の前で嬉しそうにひなたが老婆に抱き着いていた。



「ヒルメさまー!御恩は一生忘れません!!」


「そうもいかんがな」


意味深なことを言い老婆はひなたを引きはがす。


「目論みが外れたわ。娘を交通事故に遭わせ犬がかばい、死に際に思い出すくらいのを用意してやったものを……」


「え〜俺、死ぬとかヒルメ様えげつない」



ババァ!

なんつーことたくらんでたんだよ!?


つーかひなた。

お前、何ヘラヘラ笑ってんだ!?



青い顔のあたしに気付いてひなたが話しかけた。


「ミリちゃんどしたの?」


「……笑えねー」