『茶番だったな。つまらん……』
突然、聞こえたしゃがれ声に飛び上がるように驚いた。
声の聞こえた方に慌てて体ごと向けると部屋の隅にゴスロリこと老婆があの日と同じ着物姿で正座していた。
「ちょ!え!何処から!?」
パニックのあたしと対照的にひなたは落ち着いて老婆に顔を向ける。
「何処から入ったの!?てか、いつから!?」
「お前が犬の服を脱がした辺りからだ」
「やめて!?恥ずかしい!」
何なんだこのババァ!?
恥ずかしいやら腹立たしいやら自分でもわけがわからない。
黙っていたひなたは立ち上がると老婆の前に行きひざまづいた。
「ヒルメ様、お願いです!俺を人間のままミリちゃんの側に居させて下さい!狛犬なんか絶対嫌です!!」
ひざまづいたひなたは直ぐさま床に両手をついて土下座した。
慌ててあたしもひなたの隣に行き同じように土下座をする。
「お願いします!ひなたを……プーを取り上げないで!大切にします!だから……」
ギュッと目をつぶり懇願した。
ひなたが消えた日が頭に過ぎる。
もうあんな思いは二度としたくない。