静かな部屋。
ベッドの上でふたり小さく寄り添っていた。


泣きじゃくり乱れた呼吸を一息ついてあたしはひなたを抱きしめた。



「あたしを置いてどこにもいかないでよ……」


「うん……ちゃんといるよ」


ひなたはあたしの肩に頭を埋めて甘えているようだった。

あたしもそれに答えるようにもう一度、ひなたをしっかり抱く。


温かい生身の体……

この体が犬の縫いぐるみだったなんて信じられない。

縫いぐるみのプーはあたしがバラバラに引き裂いた。


胸が苦しくてあたしは懐かしい名前を口にした。




「プー……ごめんね」


「どうして?」


「……痛かったよね……ごめんね……」


ひなたはあたしの肩から顔を上げるとあたしの手首をそっと握って笑った。



「俺、嬉しかったよ。ミリちゃんが自分のことを傷つけなかったから……。ミリちゃんの痛みを俺が代わってあげられたから」



そう言って無邪気に笑った。



「……バカ犬」


「え〜?何で!?褒めてよ?」



あたしを気遣った嘘……。

きっと心が痛かったに違いない。


本当、あたしにはもったいないバカ犬だ……。