こんなに胸が痛いのに不思議と涙は出なかった。


立ち去るひなたの後ろ姿をただ愕然と見送るだけ。

校舎の中なのに雨の音がやたらと耳につく。




「何あいつ!他人のフリかよ!?ちょっとミリ!いいの!?」


レミが駆け寄るがあたしはそんな事どうでもいい。


「え、嘘……ミリの知り合いなの?」


ミサキがためらいながらあたしに近寄る。


「あれ3年の転入生だよ。王子様みたいだとかモデルみたいでカッコイイって……ウチら2年の間でも噂になってる。……ミリ知ってんの?」


ミサキの質問にあたしより先にレミが答えた。


「ミリの彼氏だよ。連絡取れないって言ってたミリの彼氏」

「嘘マジ!?メッチャうらやましい!」

「……バカ。今の見てたでしょ」

「あ……ごめんミリ」

「てか、シカトとか何なわけ!?何アレ!何様!?ミリ、あんな奴やめな!」



レミ達の会話もうわの空であたしは放心状態のまま立ち尽くしていた。



息が苦しい。