あたしに腕をとられてひなたは一瞬驚いた顔をした。
あたしはどうしていいかわからず縋り付くように名前を呼んだ。


「ひなたっ……」


「誰?」


その言葉で目の前が一気に暗くなる。


誰って何?

何それ……。


冗談でしょ。



脱力してひなたを掴んだ手がスルリと落ちた。


ひなたじゃない?


違う……絶対ひなただ。


だってひなたしかいない……。



「何で……忘れたの?」


消え入りそうな声でうつむいたまま呟いた。

泣きそうになるのを必死に堪えて口にした。



「悪いんだけど君のこと知らないから」


さらりと発せられた声は紛れも無く聞き覚えのある声。

顔を上げて見ると冷めた目であたしを見るひなたがいた。



会いたかったのに……


やっと会えたのに……。



あたしの知ってるひなたじゃない。


あたしの知ってるひなたにはもう会えない。


現実があたしの心を空っぽにして穴を開けた。