ひなたはあたしに気付く様子もなく、どんどん近づいて来る。



どうしよう……何か言わなきゃ。

ひなただ……。


てか、間違いなくひなただ!


声をかけられずに呆然と立ち尽くしているとひなたは教室から廊下に出て来た。

変わらないその姿に胸がいっぱいになる。


ヤバイ……

泣きそう。



一歩一歩、近づくひなた。

立ち止まったままのあたしとパッと目が合った。

あたしは奥歯を噛んで泣くのを堪える。





『ミリちゃんただいま』



きっとひなたはそう言って笑うんだ。

そうなるものとばかり思っていた。




数秒後の刹那――


気がつくとあたしは通り過ぎたひなたの腕を掴んでいた。


あたしの期待を裏切るように、ひなたはあたしの横を見事に素通りした。