不安なままドレッサーの前に座るとひなたはミストとコテとスプレーであたしの髪を仕上げていった。

その迷いない手際のよさにびっくりする。


「上手いじゃん!あんた何!?」

「家で留守番してんの暇だから、なにげに自分の頭で練習してたのね。俺、ズゲェ?」

「器用なのはわかった。でもあんた留守番中に何してんの!?」

「んーミリちゃんに褒めて欲しくてー」


首を傾げて笑うひなたにあたしはため息をついた。

たしかに自分でやるより綺麗かもしれない。


「……ありがと。綺麗に出来てる」

「どういたしまして!」


満面の笑顔が胸に痛い。
あたしなんか犬のひなたのブラッシング適当なのに。

リビングに行くとお姉ちゃんはまだいなく、朝食のトーストをかじった辺りでようやく起きてきた。


「おはよう。あら今日はひなた人間なの?ミリ、あたしコーヒー」


朝から女王様かよ。


お姉ちゃんを横目にコーヒーを入れに席をたつとお姉ちゃんは無言でひなたをジーッと眺めた。
そしてひなたの前に手の平を出した。


「ひなたお手」


って、ちょっと!?


「ん?はいお手」


あんたまで何ノッてんの!?
何、お姉ちゃんの手に触ってんの!?


お姉ちゃんは人間の姿のひなたにお手をさせるとひなたの頭を撫でた。


「いい子ねひなた」

「あーそう?俺いい子でしょー」


ひなたが笑ってるのは冗談と流してのことだろう。

でもお姉ちゃんの笑顔は冗談なのかわからない。

あたしは二人に割って入るようにお姉ちゃんにコーヒーを差し出した。