部屋に戻りひなたのブラッシング用のクシを手にした。
床に座るとひなたはあたしの足元で待てのポーズのままあたしを見上げる。


「ねぇ……ミリちゃん。お姉ちゃん好き?」

「は?」


唐突なひなたの問いに一瞬ひなたの頭のリボンをほどく手が止まる。


「何それ……ふつーだけど」

「ふーん。お父さんお母さんが一緒じゃなくてもお姉ちゃんがいれば寂しくないもんね」

「……別に親なんか」

「お姉ちゃんが“出来て”よかったね」

「……え?」



言葉を失うあたしに犬のひなたは「でしょ?」と首を傾げて見せた。



何で知っているんだろう……。


ひなたの言葉に鳥肌が立ったが、ハッとしてお姉ちゃんが喋ったのだと理解した。


「あんた……お姉ちゃんから聞いてたの?」

「んー……まあ?」

「言っとくけどあたし別に親の再婚に反対なんかしてないから。ただ家族ゴッコが面倒臭いだけ……」

「うん。ミリちゃんは何も悪くないよ」


あっけらかんとしたひなたの返しにあたしは拍子抜けした。

何なんだよ……。



「俺はミリちゃんが泣いてないならそれでいい。安心したからね」


「何……キモいんだけど」