アホ犬!
何、チューしてくれてんだよ!?

空気読めよ!

お前フクロにされんぞ!?

冷や冷やしながらあたしは硬く目を閉じていた。
でもそんな心配はいらなかった。



「てかさ、二人ともミリちゃんを取り合って喧嘩してるみたいだけど無意味なんじゃないの?ミリちゃんの彼氏は俺だし。あんたら喧嘩してもミリちゃんは俺のだよ?」



ひなたの言葉にあっちゃんもユリも戦意喪失したのか部屋が静まり返った。

お前、あたしの彼氏じゃねーだろ。

そんなあたしの心の突っ込みが聞こえるわけなく、しばらく沈黙したあとユリが小さく呟いた。


「……バッカみたい」


それを聞いた後、あっちゃんはひなたがあたしの彼氏だと認めないと言い放ち部屋を出て行った。




――何だったんだ今の。



部屋にはユリとひなた。
そして寝たふりをしたあたしだけになった。

どうなってこうなったのかわからない。

何故あっちゃんがこの部屋にいたのか。
何故ひなたが人間の姿になっていたのか。

とにかくあたしは寝たふりをするしかなかった。