飼い犬に手を噛まれるってこんな感じ？

いや、飼い犬って言っても可愛がってないから意味が違うか……


って、そんなことよりもこの状況。


……何！？


固まった状態でひなたの様子を伺う。

あたしの中で得体の知れない緊張感が体を動けなくさせていた。

しばらくしてひなたはあたしを離さないままぽつりと呟いた。





「抱きしめたくても……触ることすらできなかった」



「え……」


「どんなに思っても、どんなに願っても……。俺はミリちゃんに何もできなかった。泣いてるミリちゃんの頭を撫でることすらできなかった」


ひなたの真面目な声が頭の上に響く。
あたしは何のことかわからないままゆっくりひなたの方に顔を向けた。


「……何の話……？」


呆然としながらようやく口が動いた。

ひなたは目を細めてあたしの髪を撫でるといつものようにニャリと笑った。



「教えな〜い」


キョトンとするあたしに構わずひなたは再びあたしを抱き寄せる。

はあ！？


何だかわからないままあたしはひなたの体に身を委ねていた。