ももちゃんに見送られ店を出た僕は、渡された紙切れを悩んだ揚句近くのごみ箱に捨てた。
別にももちゃんの事は嫌いな訳じゃない。
むしろ好きな部類に入る。
でも電話番号を知ったって電話はしないだろう。
お店の女の子とそのお客。それ以上の関係は考えられなかった。
歩きかけて携帯を見ると、沙希ちゃんからメールの返信が入っている事に気付いた。
【件名:やったぁ!】
次の試合は今度の水曜日です。19:00キックオフだからお仕事が終わってからでも間に合いますよ。
場所は知っていると思うけど、市営陸上競技場です。
それと明後日の日曜日空いてます??
良かったらご飯行きませんか?
(明後日の日曜日か・・別に何も予定はないよな)
【件名:Re やったぁ!】
試合、水曜ですね。多分大丈夫です。
それと日曜も大丈夫だと思います。
何が食べたいですか?
僕はバスを待つ間に沙希ちゃんにメールを返した。
彼女の方からお誘いがあるなんて初めての事じゃないだろうか。
(何かあったのかな?)
彼女、沙希ちゃんは今年二十歳になったばかりで小柄な本当に可愛いと言う言葉がピッタリの女の子だ。
顔に似合わず、胸もかなり大きい。
(ももちゃんと比べれば・・・ですけど)
高校時代はバレー部に所属し、今で言うリベロのポジションをこなしていたそうだ。
彼女の口からバレーと聞くと100人中99人は踊りのバレーを想像するだろう。
それくらいの小柄さだった。
(かなりの頑張り屋さんなんだろうな)
彼女からその事を聞かされた時の感想だった。
時折吹く風が秋の匂いを運んで来る。
バス停にいるのは僕一人だった。
明日の現場行きの不安と明後日の楽しみの狭間で僕はバスを待っていた。