『Restaurant midoriの鳥』
大分川の土手沿いにある薄い緑色のレストラン。
一階の駐車場から階段を昇って店のドアを開くと陽気なカントリーミュージックが出迎えてくれる。
1960年から1970年代の古き良き時代のアメリカンミュージックは今聞いても新鮮だ。
一人暮しの僕はちょくちょくこの店に通っていた。
お勧めは昔ながらのケチャップをかけたオムライスとママであるmidoriさんの作るアメリカンハンバーガーだ。
パフェや生フルーツのドリンク類も充実している。
店内に一歩入ればそこはアメリカ。
年齢不詳のmidoriさんが出迎えてくれる。
サッカーの試合後とあって店の中は観戦帰りであろう人達でいっぱいだった。
僕らは一段高い所にある端っこの席に案内された。
「いらっしゃい勇次君。彼女連れとは珍しいわね?サッカーの帰り?」
そう言いながらお冷やとメニューをテーブルに置く。
「はい。彼女に連れられて行ってきました」
「そう。結果は残念だったみたいね。じゃあごゆっくり・・」
沙希ちゃんはオムライス、僕はハンバーガーとジェイムスンの水割りをオーダーした。
「あとでこのパフェ頼んで良い?」
「良いけど大丈夫ですか?」
僕の視線は彼女のお腹を見ている。
「ちょっとどこ見てんのよ!甘い物は別腹なんだからねっ」
そう言って青いシャツの裾を引っ張った。
「ねぇ今日は時間無くてアレだけど、今度料理作らせてね」
「カップラーメンは料理じゃないですよ?」
「失礼ね!ちゃんと作れるわよ!・・多分」
「あ、そうだ。お母さんがよろしくって。うちにも連れて来なさいって言われちゃった。次のお休みなんかどお?」
「次の・・ですか?別に予定はないし、沙希ちゃんと過ごすつもりでしたから良いですよ」
「お母さん喜ぶよー!メールしよっと!」
僕はジェイムスンの水割りを飲みながら、こんな良い子と出会えたのは奇跡に近いな、と感じずにはいられなかった。
レストランを後にし、アパートの部屋に戻ると二人でお風呂に入り、抱き合って眠る。
左腕に愛する人の重さを感じながら・・。
翌朝は沙希ちゃんの運転するライフで会社まで送ってもらった。