沙希ちゃんのもっともな意見に僕と名山さんは返す言葉が無かった。


エントランスに車が到着した事を告げられ、僕らはホテルマンにお礼を言ってステーションワゴンに乗り込んだ。

助手席には名山さん、後部座席には一人で沙希ちゃんが乗った。

(さらば新潟・・)

僕は少し感慨深いものを感じながらアクセルをゆっくりと踏み込んでいった。






新潟中央JCから信越自動車道の下りへ。
更に上越自動車道へとステーションワゴンを走らせた。
途中、魚沼P.Aでお土産を物色しガソリンを給油。そこから山陽自動車道までノンストップ。

行く時には中国自動車道を走ったのだが、帰りは山陽自動車道を選んだのには訳があった。

広島のビッグアーチを一目でも見る為だ。

『ビッグアイ』『ビッグスワン』『ビッグアーチ』

これで僕は三つの『ビッグスタジアム』を知る事になる。

「だから何?」と言われてもそれは僕の自己満足でしかないからほって置いて欲しい。


広島の宮島S.Aで遅い昼食を摂り、30分程休憩をした。
モミジの紅葉は始まっており、遠くに見える厳島神社の赤い鳥居と合わさって何とも風流な気持ちにさせられた。


山陽自動車道に別れを告げ、10号線に下りるか九州自動車道をこのまま大分まで走るか迷ったが、日曜の渋滞を考えて僕はこのまま高速道路を走る事にした。

距離的には大回りになるが、時間的には早く着くだろうと考えての決断だった。


鳥栖JCに差し掛かる手前で沙希ちゃんが言った。

「今年の最終戦鳥栖だよ。絶対来るよ・・鳥栖」

朝に比べ、沙希ちゃんの機嫌はいくらかは良くなっていたようだ。


最後の休憩ポイントの別府湾S.Aに到着した頃には日はトップリと暮れ、秋の夜風が気持ち良く感じた。

「ここまで来ればもう着いたのも同然ですね。何とか無事に」

「あー何か夢見てたような二日間だったねぇ」

「二人ともありがとう。この二日は私の岐路になったわ」

「名山さん、これからどうするんですか?」

「さあ?まだ何も考えてないの。これからゆっくり考える事にするわ」

「仕事の事なら勇次くんに任せれば?派遣で良ければだけど」


夜風に当たりながら話は続いた。