* * *

うそっ、どうしよう……!

どうしてあたしは、こんなにも人込みに弱いんだろう……。

あたしはまた、駅のホームで混雑に負けてしまっていた。

千歳とはぐれてしまって、今日は転んだりしてはいないけど、人込みの端の方に追いやられていた。

早く千歳を見つけなきゃ……。

でも、あまり動かない方がいいのかな?

どうしよう……、どうすればっ……

『――……あれ、君もしかして……』

「……え?」

どうしたらいいのかわからなくなって、半泣き状態のあたしに。

人込みの中から出てきた人が声をかけてきた。

――それは、思いもしなかった……あの人。

「っ、高と、せんぱい……っ!?」

あまりに突然で、あたしは思わずその人の名前を口にしてしまった。

だけどそれは、あたしが一方的に知った名前だったから、すぐに口を手で塞いだんだけど……名前を口にされた高遠先輩は、驚いたような表情になった。

「っ……」

どうしよう……、あたし高遠先輩の事、一方的に知ってるだけなのに……。

なのに、今名前を口にしちゃうなんて……!

「ご、ごめんなさいっ! あたし、あの、その……」

どうしたらいいのかわからない。

さっきまでは千歳とはぐれてしまって、心細くて困っていたのに……。

今は目の前の高遠先輩にどう言葉を続けたらいいのか、わからなくて……気付いたらさっきよりも、涙が滲んでいた。

だけどここで涙を溢してしまったら、高遠先輩に迷惑をかけてしまうと思うから、堪えなきゃいけないのに……。

「あの、あたし……っ」

やっぱり、堪えきれなかった。