「あたしはっ、別にいいんです……っ」
もう覚悟は出来てる、どんな言葉を投げ掛けられても、あたしは平気だから……
「答えて下さい……っ! どうして先輩は、あたしに隠すんですか……!?」
腰に腕を回したまま高遠先輩の後ろ姿を見上げ、手でブレザーをきつく掴んで涙を堪える。
『……答えられない』
それでも横顔さえ向けてくれない高遠先輩は、何度も同じ言葉を繰り返すだけ……。
「どうして……、あたしは、別にいい……ですっ。 傷付く事なんて、気にしないから、っ……」
『それじゃあだめなんだよ……』
小さくそう漏らすと、高遠先輩は腰に回されたあたしの腕をはずそうとした。
「っ、嫌です……っ、離れないで、……離させないで下さい……っ!!」
そう言ってさらにきつく抱き締めるけど、あたしの力なんて高遠先輩に敵うはずもなくて……。
『那智、離して』
あっけなく離されてしまった体は、外気の肌寒さに一瞬で溶け込んだ。
「や……っ、行かな……」
『行かないから、……那智、顔を上げて……?』
離れてしまうと思った体は、あたしと向き合った高遠先輩の温かな温もりに抱きすくめられて。
『落ち着いて……そう、いい子だ』
びっくりして見上げると、……だけどすぐに体は離されてしまった。
「っ……」
『那智、よく聞いて』
体こそ離されてしまったけど、高遠先輩はあたしの両手をギュッと握って、動作でも話をよく聞くようにと促す。
あたしは小さく頷いて、視線を落とした。
――だけど本当は聞きたくない、だって多分……今から伝えられる言葉は、あたしを突き離す言葉だから……。