『だけど那智、俺は君を離さない。それだけは誓うよ』

「………」

『……あのね那智、俺は君を突き離したりはしたくないんだ……』

「っ……」

高遠先輩の言っている事が、理解しきれない。

それでもあたしを見つめる瞳が何かを語りかけるから……あたしは涙が溢れて零れても、反抗は出来なかった。

『君には、辛い思いをさせたくない……』

――矛盾、高遠先輩は言葉と想いのつじつまが合わない。

高遠先輩を好きだと言うあたしに、高遠先輩は“好きなのかはわからない”と告げて、あたしを酷く傷付けたのに。

“辛い思いをさせたくない”だなんて……そんなのおかしい。

なのに問いただす言葉が出ないのは、あたしを見つめる高遠先輩が切なげな表情だからかな……。

だけどあたしは、どうしても聞いておきたい事があった。

「……元カノを、忘れられない理由って……何なんですか……っ?」

高遠先輩が、元カノを“好きで忘れられない訳じゃない”と言った理由。

それが一番肝心なところなのに、やっぱり高遠先輩はそれを隠すから……冷たい言葉を恐れながらも問いかける。

あたしの問いかけを聞くと、高遠先輩は一瞬目を見開いて、だけどすぐに真剣な眼差しをあたしに向けた。

『……それは、言えない』

「っ、どうしてですか……!? そんなの、へんです……理由がわからないと、納得出来ないです……!!」

『だから、何度も言ってるだろう!? 言ったら君はっ……』

言いかけて、グッとつぐまれた口に……悲しくなる。

高遠先輩は、やっぱり言わない……あたしには知る権利があるはずなのに、口を閉ざす。