あたしは肩に乗ったままの高遠先輩の手を振り払い、キッと反抗の眼差しを向ける。
「あたしはっ……いいって言ったじゃないですか……!!」
『だから那智、君は何を言いた……』
「まだ元カノを忘れられないままでもっ、いいって……っ」
そこまで言ったら、あたしの内で何かが……プツンと切れたような気がした。
「好きなんです……! なんで好きになったかなんてわからないのに……っ、先、ぱいが、っ……す、きなんです……!!」
あたしは感情が抑えられなくなって、あたしの言葉を止めようとした高遠先輩に思い切り抵抗した。
『那……』
「なのにっ、どうして先ぱ、ぃはっ……あたしの気持ち、聞こうと……しないんですかぁっ……」
――こんなに切なくて、悲しいのは……気持ちを受け入れてもらえないからじゃない。
“聞き入れてもらえないから”……。
「本当は、あたしじゃなくても……よかっ、たんじゃ、ないんですか……っ?」
元カノの代わりなんて、誰でもよかったんじゃないんですか?
「あたしがっ、どんな気持ちで……傍にいると、思っ……」
『那智、だから俺は……』
「“それでも那智がいい”……!! ……またそう言って、はぐらかす、んですか……?」
あたしのその言葉に、高遠先輩はビクッと体を強張らせた。
あたしに伸ばした手は、宙で止まって行き場を失う。
「どうしてっ……」
涙で滲んだ瞳で、あたしは高遠先輩を真っ直ぐに見つめた。
そして聞きたかった事を、震える声で問いかける。
「どうして、あたしなんですかっ……!?」
理由が知りたい……、もうどんな理由でもいいから、どうしてあたしを選んだのかを聞かせて欲しい。
じゃないとあたしは、独りよがりで、辛くて……耐えられなくなるから……。