『……いや、続けて』

「………」

『続けて』

二度言われたら、黙る事は出来ない……。

「あたしの事……っ、……好きじゃ、ないですよね……!?」

涙が滲み出した瞳を向けて思い切ってそう問うと、高遠先輩の表情は……やっぱり、冷たく見えて。

そして発された言葉も、予想通りで……。

『――……何で、そんな事を聞くの……?』

肩に添えられた高遠先輩の手に、力が加わる。

「っ……だって、あたしは……」

『君は俺の言う事を聞いていればいい、……何かを知ろうとしないで』

……どうして……。

どうして知ろうとしちゃいけないの?

好きな人の事を知りたい、高遠先輩を理解したいと願う事は許されないの?

……そんなの、変じゃない?

「あたしは……、先輩が好きなん――っ……!!」

突然、口を高遠先輩の手に塞がれて。

見上げると、高遠先輩の鋭い視線にキッと睨まれた。

『……どうして那智は、そんな事を言うの……?』

だけど発されたのは、掠れるような弱々しい声。

そんな高遠先輩に、あたしは抵抗しようとする力さえ出なかった。

口を塞いでいた手がはずされると、高遠先輩はあたしから顔を背けた。

――好きだと伝える事さえ、許されない……。

どうしてなの……?

こんなの変じゃない?

高遠先輩は、あたしを“彼女”だと言った。

だけど肝心な言葉は言ってくれないし、あたしが言う事さえ許してくれないなんて、絶対変だよ……!

「……どうしてですか……」

『……何が?』

「っ、何が、じゃないですよ……!!」

わかっているくせに、シラを切って。

それでもあたしが言おうとすると、貴方はそれを阻止するんでしょう……?