“高遠先輩の事本当に好きなの?”

「……何で?」

何でそんな事を聞くの?

だってあたしは、高遠先輩の事、ちゃんと好きな……はず。

……“はず”?

『……とりあえず渡ろう』

今度はあたしが立ち止まってしまって、なぜか動けなくなった。

千歳はそんなあたしの手を引くと、点滅し出した横断歩道を小走りで渡る。

どうして……あたし今、好きなはずって……。

『……や、那智がいいならいいんだけどね、なんかちょっと気になっただけだから』

横断歩道を渡り終えると、千歳はあたしの手を離してそう言った。

あたしがいいならって……それはそうだけど、そうなんだけど……

『あぁっ、気にしないで! あんたいつも気にしすぎるんだからっ』

「っ、だって……!!」

『ごめんごめんっ、あたしが悪かった! いいよ別に、那智が好きだと思ったなら好きって事なんだから、ね?』

そう言いながら、千歳はあたしの肩をバシバシと叩いた。

……あたしは高遠先輩が好き、だから何をされても許せた。

それは、あたしが高遠先輩を許せたのは、あたしが高遠先輩を好きだからじゃないの……?

――それからの事は、あまり記憶がなかった。

千歳の話も半分くらいしか聞いてなくて、ただ何かを問われる度に相槌を打っていただけ。

だって……あたしの頭の中は高遠先輩に対する気持ちの事で、いっぱいだったから……。

あたしのこの想いは、何かが違うの?

高遠先輩の事を考える度に切なくなって、こんなにも胸が締め付けられるのは、恋とは違うの……?

そればかり考えて……、頭の中を整理しようと思っても、どうしても何かが引っ掛かってしまう。

それが何なのかは、わからないけど……。