叶わない恋をするのが、こんなに辛い事だとは思わなかった。
どうしてあたしは、あたしを好きな訳でもない高遠先輩の隣にいるんだろう?
どうしてあたしは、離れる事が出来ないんだろう……。
高遠先輩の心の中には、まだ元カノがいるのに……あたしはそれでもいいだなんて、そんな悲劇のヒロインみたいな事を言って。
だけどそれでも、それはあたしが決めた事だから。
高遠先輩があたしを離さないんじゃなくて、あたしが高遠先輩を離せないだけだから――……。
『那智っ、出てきたよ!!』
「あ、うんっ」
――相変わらずあたしは、グラウンドに出てきた高遠先輩をこっそり教室から眺めている。
『いやー……相変わらず見つけにくいわ……』
窓の外を眺めながら、千歳は目を細めてそう言った。
たしかに高遠先輩は特に目立つ訳でもないから、普通なら簡単に見つからないんだけど……あたしにはわかる。
あたしの目には、いつも高遠先輩だけが輝いて見えるから。
『那智さぁ……高遠先輩のどこが好きなの?』
不意にそう問われて、あたしはすぐには答えられなかった。
高遠先輩の好きなところなんて、今まで考えた事もなかった。
色々な事を感じとる事もなく、いつの間にか好きになっていたから。
「……わからない……、第一どうして好きになったのかもわからないし……」
あたしがそう言うと、千歳はあたしの頭をポンと叩いた。
『そっか、なるほどね……あれか、好きに理由なんてないってやつ?』
「……え?」
『まぁそうよね、好きなものは好き、それが答えだよねっ』