今にも溢れ出しそうな涙を堪えるあたしにかけられた言葉は……残酷だった。
『……傷付くのは君だよ?』
無慈悲で冷めた瞳はあたしを見下ろし、氷のナイフが胸に刺さる。
傷付くのはあたし、……やっぱり高遠先輩はあたしの事なんて、何とも思ってなかったんだ。
そう思ったら、涙は堰を切ったように溢れ出して、止まらなかった。
……わかってた。
高遠先輩の心があたしに向いていなかった事くらい、一緒にいたら理解出来た。
それでも……少しの可能性にすがりたかった。
優しい高遠先輩に、期待していた……。
もしかしたらあたしの事、本気になってくれるかなって……。
だけど、無理だったんですね。
あたしの事なんて、やっぱり“もの”扱いのままなんですね……?
「っ、あたし……」
だったらあたしは、どうすればいいの?
「先ぱっ、を……」
辛い思いなんて、したくない。
「す……っ……」
――だけど、高遠先輩を許す訳にはいかない。
「責任っ……、取って下さい……!」
『……え?』
あたしをこんな気持ちにさせたんだから、その責任くらい取ってくれなきゃ、許さない。
『那智、何言ってるの……?』
高遠先輩は戸惑いの表情をあたしに向ける。
正直あたしだって、自分の言った言葉が理解出来ないけど……
「あたし……先輩が、……許せないです……っ」
あたしをまともな扱いをしないで、ただ傍に“置いておく”だけの貴方が理解し難い。
「だから……」
『……だから?』
言葉に詰まるあたしを、高遠先輩は冷たく見つめる。
それでも見つめられるだけで高鳴る鼓動を、あたしは隠せるのかな……。
――本当は多分、あたしは高遠先輩が好き。
冷たくされても、たまに見せるあの日のような優しさが、あたしの胸を締め付ける。
だからこそ、許せない。
……許したくない……。