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『――じゃあちょっと待ってて、すぐに帰ってくるから』
たくさんのお店が並ぶショッピモールに着くと、高遠先輩はあたしをアクセサリーが売っているお店に残し、ひとりでどこかへ行ってしまった。
あたしって、一緒にいる意味あるのかな……。
離れて行く後ろ姿を見ながらそんな事を思ったけど、あたしは高遠先輩が帰ってくるまでこのお店の中を見て回る事にした。
比較的小さめなお店の中には、たくさんのアクセサリーが照明の淡い光に照らされて、煌めいて見える。
お店の大きさに合わない豊富な品数で、ごちゃごちゃしているようにも見えるけど、よく見るとひとつひとつ綺麗に並べられていた。
あたしはちょうど目に入った蝶のネックレスを手に取り、何気無く見た金額に驚いてしまった。
こ、これで5000円……!?
銀の鎖で、蝶の羽根に小さな石がひとつ付いているだけの、とてもシンプルなものなのに……。
これで5000円なんて……いくらなんでも、こんなの買えない。
あたしはネックレスを綺麗に置き直し、他の品物を見て回った。
だけど、どうやらこのお店は比較的値段が高いようで……普段あたしが身につけているような、800円程度の品物なんてほとんどなくて。
800円で買えるのは、ヘアピンくらいだった。
『――那智』
薄いピンク色の石がついたヘアピンを手に取って見ていると、後ろから声をかけられた。
『待たせてごめんね、何か買うものはある?』
振り返ると帰ってきた高遠先輩がそう問うので、あたしは持っていたヘアピンを元の場所に戻し、黙って首を横に振る。
可愛いものはたくさんあるけど、どれも高くてあたしには買えないから……。
『……本当にないの?』
「え? あ、はい……」
『そう……、でも何か欲しいなら買ってあげるよ? 今日付き合ってもらっちゃったし』
「そ、そんなっ、あたしそんなつもりはないです……っ、本当にいいんです!」
あたしが曖昧な返事をしてしまったからか、高遠先輩は小首をかしげてそんな事を言った。
だけど本当にそんなつもりはないから、あたしは高遠先輩の後ろに回り、背中を軽く押してお店から出た。