鞄の中がうまく整理出来なくて、全部出そうと鞄をひっくり返したら、出てきた筆箱の口が、開いていて……

『那智、何してるの……!?』

「ご、ごめんなさい……っ!」

無駄にたくさん持っていた色とりどりのペンが、転がってテーブルの上から床に落ちる。

それを急いで拾ったけど、丸いフォルムのペンは意外と遠くまで転がってしまって……。

『はぁ……、まったく、何やってるの……』

高遠先輩はそう言うと、遠くまで転がってしまったペンを拾いに行ってくれた。

『はい、全部ある?』

「ありがとうございます……、全部あります、本当にすみませんでした……っ」

高遠先輩からペンを受け取って、あたしは深々と頭を下げる。

あたしのせいで高遠先輩まで周りの人に笑われてしまって、申し訳なくて……。

『大丈夫だよ、そんな気にしなくていいから……』

呆れられちゃったかと思ったけど、高遠先輩はあたしの頭を軽く叩くと優しく微笑んだ。

そんな表情に、あたしは胸をときめかせられる。

どうして今日の高遠先輩は、こんなに優しいんだろう……。

『じゃあそれしまって、行こう』

「はい……っ」

優しい高遠先輩に調子を狂わされて、あたしは赤い顔を俯かせながらペンをしまった筆箱を鞄に詰め込んだ。