あたしは何だか申し訳なくなって、手を膝に置いて下を向いた。
そんなあたしを見ると千歳は立ち上がり、慌てたようにしながらあたしの肩を叩く。
『ちょっと、何で那智までしょぼくれてるのよっ!?』
「だ、だって……」
『やめてよ……っ、あたしは別に責めてる訳じゃないんだから、ねっ?』
千歳はどう思ったのか、なぜか必死であたしにそう言い聞かせた。
『別に言いたくないならいいから、だからそんな顔しないで!?』
「え……?」
千歳の言葉に、あたしは千歳を見上げた。
“そんな顔”って……あたし今、変な顔してたの?
「……ねぇ千歳、あたし今どんな顔してた?」
『え? あー……なんかうまく言い表せないけど、切ないような、哀しいような顔?』
その言葉で、あたしは自分がしていた表情の答えが少しだけわかった。
高遠先輩との事を千歳に話せなくて、それが申し訳ないと思ったのがひとつの答え。
それから……千歳があたしを、本当に高遠先輩の彼女だと思っていた事に、少し複雑な気持ちになったから……。
あたしは高遠先輩の彼女なのかと問われても、頷く事は出来ない。
だって、いくら高遠先輩本人があたしを彼女だと言っても、そんなの口先だけだから、本当の彼女ではない気がして……。
『……那智、また同じ顔になってる』
高遠先輩の事を考えていたあたしに、千歳が少し切なげな顔でそう言った。
やっぱりあたしは、高遠先輩の事を考えると変な顔になるんだ……。