* * *

『――じゃあ那智、また明日ね』

駅に着くと、高遠先輩はすぐにあたしの手を離した。

「えっと……、あの……」

『ん?』

まだ聞きたい事が山ほどあって、本当は問いかけてしまいたいけど……

「……いえ、何でもないです……」

また冷たくされるのが嫌で、あたしは口をつぐんで俯いた。

『そう、それならいいけど……』

それから急に沈黙してしまって、あたしは居心地が悪くなって何か話そうと高遠先輩を見上げた。

だけど、目が合って恥ずかしくなって……あたしは顔を反らす。

『……那智、どうして君はそうすぐに顔を反らすの……』

呆れたようにそう言われて、あたしはグッと唇を噛み締めた。

だって……目が合うとドキドキしちゃって顔が熱くなるから、そんなの見られたくないし……。

言い返せないで俯くあたしに、高遠先輩はひとつため息をついた。

そんな風にされてしまったから、あたしの瞳には涙が滲む。

呆れられてしまったようで、どうしても悲しくて……、あたしはスカートの裾をギュッと握り締めた。

そんなあたしの頭を軽くぽんと軽く叩くと、高遠先輩口を開いた。

『だめだな……、那智相手だと何かうまくいかない……』

「……っ」

瞬間、頭に乗せられた手がズシリと重く感じた。

やっぱりあたし、呆れられちゃったんだ……。

溢れそうな涙を堪えて、あたしは鼻をすすった。

『那智、俺はね……』

不意に頬を触れられて、あたしは思わず高遠先輩を見上げる。

見上げた高遠先輩は優しげで、だけど少し哀しげな表情であたしを見つめていた。