それでも容赦のない無慈悲な瞳に、あたしは泣いても無駄だと諭される。

こんなのやっぱり嫌だ、なのに……身動きがとれなくて、逃げる事も出来ない。

あたしを見下ろす瞳が怖くて、言葉も出ない……。

『那智、どうなの?』

「……っ……」

『那智』

「ぁ……あたしはっ、あたしを好きに、なってくれる人じゃないと……や……」

『でも、……君は俺のものだよ……』

やっと口に出来たあたしのその言葉を遮ってそう言うと、高遠先輩はそのまま……あたしの唇に、唇を重ねた。

「……っ、――……!!」

突然、口内に入り込んできた……変な感触。

「っ、ん……はぁ……、んんー……」

同時に耳に入るのは、少し開いた口から漏れる、自分でも聞いた事のないような、甘さを帯びたあたしの声。

あまりの荒々しさに、息苦しくて、目眩がする……。

「ん、……んゃぁ……、っ……」

全身の力が抜けて、あたしが抵抗出来なくなった時……あたしを押さえつけていた高遠先輩の力がゆるんで、唇は離れた。

『……那智、君が俺に逆らうのなら、俺は容赦しないよ……』

冷めた瞳であたしを見下ろし、発された拘束の言葉。

あたしは高遠先輩に、完全に囚われた……。

脱力してしまった体を起こそうと、あたしは体に力を入れる。

『まだだめだよ、ちゃんと言う事聞いて』

だけど高遠先輩は、そう言ってまたあたしを床に押し付けた。

どうしてこんな事に……あたしがあの時、ちゃんと聞いていなかったからいけないって言うの?

例えそうだとしても、どうして高遠先輩はあたしにこんな事をするのかな……。

高遠先輩にとってあたしは、一体何なの……?