『まぁいいや、それで? 那智は俺の彼女は嫌?』

そしてそう言うと、あたしの瞳を真っ直ぐに見つめる。

彼女……そう言われても、付き合ってとか、好きとか言われてないからピンと来ない……。

どうして?

どうして高遠先輩は、いきなりあたしを彼女だなんて言うの……?

ついこの間出会ったばかりで、……いきなりキスしたりして、なのに肝心な言葉はないし。

これは高遠先輩の、エゴじゃないのかな……。

あたしは真意を知りたくて、問いかける事にした。

だって彼女なら、それなりの気持ちがあるものでしょう?

「……どうして、あたしが彼女なんですか……?」

気持ちがないのに彼女だなんて、そんなの嫌。

『どうして、って……彼女に理由がいるの?』

「……え?」

『俺は、那智を俺のものにしたいと思ったから俺のものにした、……それだけの事だよ』

「……それって、じゃああたしは、……あたしの事は、好きって訳じゃないんですか……っ!?」

――言葉にしてから、しまったと思った。

あたしの言葉を聞くと、さっきまで優しく笑っていた高遠先輩が……急に冷めた表情になった。

そして、あたしを付き落とす言葉を口にする。

『……好きじゃなかったら、どうする訳?』

冷めた瞳でそう問われて、あたしは怯んで動けなくなってしまった。

高遠先輩はそんなあたしの腕を引っ張り椅子から立たせると、そのまま……床に押し倒す。

「っ、や……!!」

『ねぇ……好きじゃなかったら、どうする訳? 俺から逃げるつもり?』

「……っ……!」

両手首を押さえつけられて、上に覆い被さる高遠先輩に、あたしは……恐怖で涙が溢れた。