――どうしてあたしは、こんな目にあっているんだろう……。
あたしがいけないの?
あたしがちびで、トロいからいけなかったの……?
どうして誰も、声さえ掛けてくれないのかな……。
悪いのは、こんなところで転んだあたし。
そう思い知らせるように、過ぎ去って行く人達。
誰にも声を掛けられない、誰にも助けてもらえない、誰にも……
『――……大丈夫?』
「……え……」
自分が惨めに思えて、座り込んだまま俯いて涙を溢していたあたしに。
差し出された……ひとつの大きな手。
見上げると、涙で滲む視界に映る、……男の人。
あたしは制服の袖で涙を拭ってから、もう一度その人を見上げた。
よく見ると、その人はあたしの知ってる顔だった。
話した事はなかったし、特に意識して見た事はなかったけど……たしかこの人は、同じ学校の、ひとつ歳上の先輩。
『えっと……もしかして、立てない?』
「っえ、あ……いえっ、立てます……っ!」
先輩を見上げたまま動かなかったあたしに、先輩は小首をかしげてもう一度手を差し出した。
『じゃあとりあえず立とうか、掴まっていいよ』
そう言いながら優しく微笑む先輩を見て、あたしは自分に変化を覚えた。
どうしたんだろう……なんか顔が熱くて、心臓が……
『……大丈夫?』
「っ……」
――心臓が、壊れそう。
あたしを真っ直ぐに見つめる眼差し、あたしに差し出す大きな手、優しく微笑む穏やかな表情。
その全てにドキドキして、あたしはまた動けなくなってしまった。