どうして……?
何が何だか、わかんない……っ!
千歳は立ち上がると、困惑し続けるあたしに近寄ってきた。
何かと思って千歳を見ると、突然耳元に顔を寄せてきて……
『頑張りなさいよ?』
少し笑い混じりに、小さくそう言った。
頑張りなさいって……だからそれ以前に、あたしは高遠先輩の……えぇっ……!?
『じゃああたしは帰りますね、那智をよろしくお願いします!!』
『ああ、それより君をひとりで帰らせる事になってしまったね……、ごめん』
『いえいえっ、そんないいんですよ! じゃあお幸せにっ、那智、また明日ね!!』
そう言ってあたしに手を振ると、千歳は元気よく帰っていった。
その瞬間から、この教室にはあたしと高遠先輩、ふたりきり……。
『……いい子だね』
まだ困惑しているあたしに、教室から出ていった千歳を見ていた高遠先輩はそう言葉をかけてきた。
「え……あ、はい……」
『どうしたの?』
どうしたのって……だって高遠先輩、あたしを……彼女……?
『……那智?』
「あの……あたしって、高遠先輩の……」
高遠先輩の言葉がどうも信じきれなくて、あたしは問いかける。
「高遠先輩のっ、彼女、なんですかっ……?」
あたしのその言葉に、高遠先輩は目を丸くした。
だけどすぐに真顔に戻ると、そのまま少しだけ笑って口を開く。
『違うの?』
「えっ……、だって高遠先輩、あたしはものだって……」
『違うよ、……俺が君は俺のものって言ったのがいけなかったのかな……』
小さくそう言うと、高遠先輩はあたしの頭を軽く撫でて微笑む。
『俺のものって言うのはね、別に那智が“もの”っていう訳ではないよ』
「っ、じゃあ……」
『ただの例えだよ、わかりやすいと思ったんだけどな……わからなかった?』
「っ……?」
高遠先輩の言葉がわからなくて、あたしは小首をかしげる。
そんなあたしに、高遠先輩は困ったように笑った。