『今日は那智の事、借りてもいいかな?』

『え? あー……はい、えっと……あの、その前にひとつ聞いてもいいですか?』

どうしたらいいかとうろたえていたあたしに構わず、千歳は高遠先輩にそう問いかける。

まさか、聞くって……

『先輩と、那智との関係は一体……?』

……やっぱり……。

あたしは千歳が高遠先輩に問いかけた事に、さらにうろたえた。

だけど本当のところ、あたしもそれは気になっていたから、俯きながらも高遠先輩の言葉を待つ。

『俺と那智の関係? そうだな……』

言いながら、高遠先輩は突然あたしの頭の上に手を置いたから、あたしは思わずびっくりして体をビクリと強張らせた。

そんなあたしの様子に高遠先輩はクスッと小さく笑うと、口を開いた。

『何だと思う?』

『……え?』

予想外の問いに千歳は驚いたようで、目を丸くする。

あたしにとってもそれは期待外れの言葉で、正直少し哀しくなった。

もしかして高遠先輩、千歳にも“俺のもの”だって言うのかな……。

そんな事を言われたら千歳は、……ううん、あたしはどう思うんだろう……。

そんな事を考えていたあたしに、高遠先輩が次に発した言葉は……あたしを本当に驚かせた。

『那智はね、……俺の彼女だよ』

「……え、っ……?」

千歳よりも先に、あたしが驚きの声を発していた。

高遠先輩、今何て……?

『何で那智が驚いているの、そうだろう?』

「え、……えぇっ?」

何でって……だって高遠先輩は、あたしの事なんて……

『なぁんだっ、やっぱりそうなんですか! んもーっ、何で那智は正直に言わないかなぁ!?』

高遠先輩の言葉に困惑しているあたしの肩を、千歳はそう言いながら何度か軽く叩いた。