* * *

『那智ーっ、いい加減ちゃんと話してよーっ!!』

放課後になって、あたしは迎えに来ると言っていた高遠先輩を待っていた。

だけど千歳が帰らずにあたしに高遠先輩との事を教えてとしつこいから、正直困っている。

今高遠先輩に来られたら、また面倒な事になりそう……。

「だからっ、別に話す事なんてないの! ほんとに何もないから、今日は先に帰って良いよっ」

『それが怪しいのよっ! いつも一緒に帰ってたのに、何で今日は先に帰ってとか言うの!?』

「っ、それはっ……」

『ほらっ、怪しい!』

言葉を返せなくなったあたしに、千歳はそう言ってさらに迫る。

まさか千歳が、ここまでしつこいなんて……。

だけどあたしはとにかく話すのが嫌だった。

だって高遠先輩は、別にあたしと付き合っている訳でもないし……、第一あたしが好きって訳でもない。

なのに一緒にいるなんてやっぱり変だから、説明しにくいのに……。

『那智ーっ』

黙り込むあたしに、千歳は諦めずに問いかけてくるから、どうしようかと困っていた、その時。

『――那智』

さらにややこしくなる、話の元凶が現れた。

『……那智、あんたやっぱりあたしに何か隠してるでしょ……』

教室にやって来た高遠先輩を見ると、千歳は小さくそう問いかけてきた。

「えっと……だから、あの……」

『那智、どうかした?』

千歳に問われて困惑しているあたしの元に、高遠先輩が近寄ってきた。

どうしよう……何でこんな事になっちゃうの……!?

『あぁ……こんにちは、君はたしかあの時那智と一緒にいた子だよね?』

『え、あ、はい……』

やっぱり高遠先輩は、困惑しているあたしにはお構い無しのようで、あたしの横にいる千歳に声をかけた。