「……高遠先輩」

あたしの手を引いて少し前を歩く高遠先輩を呼び止める。

階段の少し手前で立ち止まると、高遠先輩はあたしを振り返った。

『どうしたの?』

「……やっぱりあたし、先輩が好きなんだって今改めて思ったから、それを伝えたかっただけ、で、す」

言ってる途中で恥ずかしくなってきて、最後はおかしくなってしまったけど。

ちゃんと伝えると、高遠先輩は目を丸くしてあたしを見つめていた。

だけどしばらくしても何も反応してくれないから、今度はあたしが手を引いて歩き出そうとすると……。

『那智のそういう真っ直ぐなところが、俺は、……好きだよ』

そう言って、見た事もないくらいの満面の笑みを向けてくれたから……あたしは完全に、貴方に囚われる。

その笑顔は反則……あまりにも、愛しい。

きっとあたしのこの想いは、いつまでも積み重なっていくんだろう。

愛しさが積み重なる度に、増していく純情な想い。

それはあたしの、恋心。

「……行きましょう、きっと千歳が待ってます!」

もしもこの先、また貴方に傷付けられる事があったとしても。

『じゃあ急ごう、おいで那智』

繋がれたこの手が離れなければ、お互いの想いが通じ合っていれば、きっと大丈夫。

傷付け、傷付けられ、お互いがお互いを苦しめて、哀しい思いをしたからこそ……この絆は、強い。

階段を登りきると、改札の横で千歳がいかにも不機嫌そうな表情で待っていた。

その姿を見つけて、高遠先輩とお互いの顔を見合わせ、きっと怒られるね、何て言いながら笑い合う。

貴方のその優しい微笑みは、出会った時と変わらない……きっとあたしをいつまでも、ときめかせるから。

あたしも変わらずに、その微笑みに恋をし続けるでしょう。

真っ直ぐに、純情に……、貴方へのこの恋心で、永遠に。


【END】