「あの……でもあたしは、先輩の言う通りにするので……」
『だからそれがだめなんだよ、わかる? とにかく俺は君を傷付けたくない……だから制限してよ』
制限って……そう言われても、別にあたしは……
「あたしの望みは、先輩の彼女としての在り方を、先輩の付き合い方で教えて欲しいんです。だから先輩の望む事なら、何だって受け入れます」
真っ直ぐに見つめてそう言うと、高遠先輩は明らかに困ったようにうろたえる。
『だから、そんな事言うと傷付ける事だって……』
「あたしが傷付くのはっ、……先輩が、あたしから離れていってしまう事だけです……」
今ならもう、何をされても傷付いたりしない。
高遠先輩の気持ちがあたしに向いているのなら、そこにあたしが傷付く要素なんてないから。
だから唯一怖いのは、高遠先輩に拒絶される事……。
『……じゃあ例えば、キスしても傷付かない?』
「先輩が、あたしを好きでするのなら、むしろ、嬉しいです……」
『……じゃあ例えば、それ以上の事とかは……』
「そ、れはっ、……先輩があたしを好きでしたいなら、別にっ……」
答えながら、顔が上気していくのがわかった。
まだちゃんと付き合っている訳じゃないのに、……いくら例えでも、それ以上の事なんて、そんな……っ
『……本当に、傷付いたりしない……?』
あたしの反応とは裏腹に、高遠先輩はいたって真剣にそう問いかけてきた。
だからあたしはちょっと変な事を考えていた自分を悔いて、高遠先輩から視線を逸らす。
「先輩が、あたしを好きなら……何をされても文句は言いませんっ」
『じゃあちゃんと俺を見て言って』
逸らしたはずの顔は、高遠先輩の手に向きを変えられてしまう。
息がかかるほどの距離で見つめ合うと、どうしたって恥ずかしくて……。
『ちゃんと俺を見て、視線を逸らしたりしないで』
そうとがめられて、あたしは仕方なく高遠先輩の瞳を見つめた。
その瞳に映る自分が、いかにも恥ずかしげにしているから、顔は余計に上気してしまう。