なんとなく気恥ずかしくなってきて、高遠先輩の胸に額を押しあてて顔を隠す。
するとそれをさせないようにと、高遠先輩があたしの頬に手をあてて顔を上げさせた。
そのまま重なった視線に、囚われる。
『……那智となら、うまくやっていけるのかな……』
あたしを見つめてそう呟いた高遠先輩の瞳が、少しだけ潤んで見える。
高遠先輩は、元カノに“何もしてくれなさすぎる”と言われたと言っていた。
でもあたしは、むしろそれでいい……。
よこしまな気持ちなんてなくて、ただ純粋に高遠先輩とずっと一緒にいたいと思うから。
「あたしは先輩を、哀しませたりしませんっ……。先輩の付き合い方がいいんです、先輩がしたいようにしてくれればそれで……」
『だめだよ那智、……そんな事言うと、君を傷付ける事だってするかもしれない……』
「あたしを傷付ける事って、それって具体的に何なんですか……?」
そう問うと、高遠先輩は少しびっくりしたようにあたしを見つめた。
それがあまりにも突然で、どうしてなのかと伺うように見つめ返す。
『……那智、それ本気で言ったの?』
「っえ?」
問われた意味が理解しきれなくて小首を傾げると、高遠先輩はそんなあたしを見て笑った。
『はは……こういうのを鈍感、って言うのかな?』
「えぇっ……!?」
『君を傷付ける事は、……君が“何もしてくれなくてもいい”と望むなら、例えばキスしたりする事かな』
「……え?」
キスくらい、別に傷付く原因にはならない。
第一前に何度かしているから、それくらいで傷付いたりなんて……
『だって何もしてくれなくてもいいってさ、遠回しに“何もしないで”って言っているようなものだろう?』
「……あ……」
そう言われてみると、そう聞こえるような気もする。
でもあたしはさっき、それは訂正したから……じゃあ高遠先輩は今、何を渋っているの?