「それが聞きたかったの……あれは、どういう意味だったの……?」
捨てちゃえばいいだなんて、千歳が本気でそんな事を言うようには思えない。
それでも口を吐いて出てきた言葉は消せないから、せめてあの時の千歳の本心を知りたい。
それから、あの涙の理由も……。
『……さっきも言ったけど、あたし本当は寂しくて……あと、不安だったの』
「不安……?」
『そりゃあ那智が高遠先輩と幸せでいるなら、あたしだって嬉しいよ? でもね……』
そこで言葉をつまらせた千歳に、あたしは握り締めた手に力を入れて、続きを話してくれるように促す。
するとまた、小さく呟き出した。
『那智がたまに悲しい顔をしてたから。だから那智を困らせる原因が、……高遠先輩が、どうしても気になってて……』
「どうして千歳は、あたしと高遠先輩との関係が変だって気付いたの?」
千歳が話している事と少し話がズレるけど、やっぱりそこがどうしても気になった。
千歳の前では“恋人同士”だったはずなのに……どこから不安要素を感じ取ったの?
『それは別に、……なんとなくだったかな。那智の様子が変わるのが高遠先輩との話の前後だったから、きっとそうなんだろうなって……』
そう言われて、あたしは妙に納得してしまった。
たしかに思い返してみると、高遠先輩との事を話すといつも余計な事も思い出していたし……。
『だから、結果的に高遠先輩なんてー……って、あたしは思っちゃった訳』
そう話をまとめると、千歳はあたしが握り締めていた手を振り払い、あたしに苦笑いを向けた。
そんな風に思ってくれてたんだ……、そこまで心配してもらえていたなんて、もしかしたらあたしは幸せ者なのかも……。