『あのね、あたしの話を聞いてくれるかな?』

「え……うん、もちろん……」

普段あまり静かな声で話さない千歳が、今、聞いた事もないくらいの落ち着いた静かな声で呟く。

『あたしね、……本当は、寂しかったの……』

俯くと髪の毛で顔を隠す千歳の表情が伺えなくて、少し不安になった。

だけど少し肩が小刻みに震えているのが、触れ合っていたあたしの肩に伝わる。

寂しかった、って……何が?

『那智はずっと、あたしと出会ってから13年間、隠し事なんてした事なかったでしょう?』

3歳の時に出会ったらしいあたし達は、ずっと一緒にいた。

だからあたしは千歳になら何でも話せた、千歳になら隠し事なんて……した事、なかった。

言葉を返せなくなったあたしは、それでもコクリと頷く。

そうだ……あたし、千歳に隠し事なんてした事なかったんだ。

だけど今は高遠先輩との事だけ、唯一あたしは隠している……。

『それが嬉しかったの。あたしを信用してくれて、隠し事もせずに何でも話してくれる事が、素直に嬉しかった』

そこまで言うと急に黙り込んでしまった千歳に、あたしが口を開こうとすると……ポツリと、小さな呟きが聞こえた。

『でも、変わっちゃったから……』

「……え?」

重く響く声は、あたしの胸をチクリと刺す。

千歳の雰囲気が少しだけ暗くて……、それでも不意に顔を上げると、あたしに困ったような笑みを向けた。

『変わったよね那智、隠し事するなんて一人前になったじゃない!』

バシッと背中を叩かれて、その痛みにあたしが顔を歪めると、千歳は慌ててあたしの背中をさする。

『ご、ごめんっ……ちょっと勢いあまっちゃった』

「だ、大丈夫。……それより、変わっちゃったって……あたしが千歳に隠し事をするようになったって言いたいの……?」

そう問うと、あたしの背中をさすっていた手がピタリと止まった。