携帯を握り締めたまましばらく経って、あたしは恐る恐る指を動かす。
そしてリダイヤルから千歳の名前を見つけると、そのまま通話ボタンを押した。
《プルルルル……、プルルルル……》
携帯を耳にあてると聞こえてくる千歳を呼び出す音に全神経を集中させて、ゴクリと息を呑む。
出てくれたとして、まず何て言えばいいんだろう?
そう考えているうちにも、呼び鈴は鳴り続けたまま……。
だけどこんなに鳴らしているのに出ないなんて……、やっぱり千歳はあたしを避けようとしてる……!?
普段電話をかけても2、3度呼び鈴を鳴らしたくらいで出てくれる千歳が、今いくら鳴らしても出てくれない。
だからやっぱりだめなんだと、諦めて通話を切ろうとした、その時だった。
《プル……、………》
一瞬呼び鈴が切れて、少し何かの音を拾った。
だから出てくれたと思って、言葉を発するために息を吸った時――……ブツッ、と突然通話を切られた。
《ツー……、ツー……》
……え?
携帯から聞こえてくるのは、通話を切られた後の音だけ。
嘘っ、切られちゃっ……
《〜♪…♪♪〜……》
「……っ!?」
絶望しそうになっていたあたしに、それはまだ早いと言うように鳴り出した携帯は、千歳からの着信。
あたしは息み呑み、恐る恐る、でもしっかりと通話ボタンを押した。
「っ、もしも……」
《あ、那智? さっきごめんねー、寝ぼけて通話切るボタン押しちゃったー!!》
「……っえ?」
あははと笑いながら、予想もしていなかった反応をした千歳に、あたしは思わず呆けた声を漏らしてしまった。
いつも通り……ううん、いつも以上にテンションの高い千歳に、あたしは疑問を投げ掛ける。
「ど、どうしたの?」
《は? どうしたの、はこっちのセリフなんだけどー、那智は何でこんな時間に電話してきたの?》
「えぇっ、あたしは、その……」
怒っていると思ってた、なのにどうしていつも通りなの……!?