以前は繋がらなかった高遠先輩との電話回線が、今繋がっている。

それが嬉しくて少し泣きそうになると、携帯の持ち主がそれに応答した。

《……もしもし?》

「っあ……高遠、先ぱい、ですよね……!?」

《そうだけど? ……俺の携帯なんだし他に誰が出ると言うの》

繋がった事に嬉しくなったあたしが思わず変な質問をしてしまうと、高遠先輩は少し笑って答えてくれた。

それだけで、本当に本当に嬉しくて……。

「よかっ、た……繋がった、っ、出てくれた……!!」

《……そうか、今まで拒否設定にしていた俺が悪いね、ごめん》

涙声でそう言うあたしを、高遠先輩が少し苦笑混じりになだめる……それだけで充分。

《それでどうしたの、こんな時間に那智から電話をかけてくるなんて》

「ぅえ……あ、ごめんなさい、別に用はなかったんです……!」

《……え?》

携帯越しの高遠先輩は、呆気にとられたようにすっとんきょうな声を漏らした。

意味もなく、繋がるかどうか確かめたかっただけなんて、理由になる訳がない。

いきなり電話をかけて驚かせて、あげくの果てに用はないなんて……やっぱり失礼だよね?

そう判断したあたしは、電話をかけた理由を正直に話す事にした。

《――……そう、それは大変だね、今すぐ電話をかけなきゃ》

理由を話し終えると、一番にそう言った高遠先輩の、他人事のような答えにあたしは少しだけ肩を落としつつ。

でも本当に他人事なんだから仕方ないと、ひとつため息のように息を漏らしたあたしに、高遠先輩は言葉を続けた。

《ごめん那智、別に考えなしで言った訳ではないよ……?》

「え……?」