欲張りなあたしは、自分の望みの中に高遠先輩の望みを取り込んでいた。
好きな人と幸せになりたい、高遠先輩と一緒にいる事があたしの幸せ。
そして高遠先輩の幸せは、あたしと一緒にいる事だと言うのなら……それでいいじゃないですか。
あたし達が、お互いが想う願いは、形は違っても結局は同じ……そうでしょう、高遠先輩?
問いかけるように瞳を見つめると、高遠先輩は呆れたような表情であたしを見つめ返してきた。
『……結局、君が言いたい事は何? 君は俺の……一度裏切られて諦めた、俺の幸せを叶えられるの?』
「その叶えて欲しいと言う幸せが……“好きな人と一緒にいたい”ならば、叶えます、あたしを信じて下さい……!」
信じる事を諦めたらそれで終わり、でも高遠先輩にはあたしを信じたいという気持ちがあるから……叶わないはずがない。
「誰かが、先輩が幸せになるのを許さない訳じゃないんですから。許さないのは、自分自身じゃないですか?」
そう問うと、抱き締めていた高遠先輩がピクリと肩を弾ませた。
そしてゆっくり、あたしの方に向き直る。
『……俺が君と幸せになりたいと願う事は、許される事なのかな?』
今にも泣き出しそうな高遠先輩の表情は、あたしの胸を切なく締め付ける。
「許されますよ……あたしは許します、だからあとは先輩次第ですよ? あたしへの負い目は捨てて、自分を許してあげて下さい……」
潤む瞳を見つめると、自分の視界も歪み始めた。
だけどそれを拭わずそのまま見つめ続けると、高遠先輩は微かに微笑みを浮かべた。