「……あたし、明日もう一度先輩に会いに行く」

《うん、そうしな! それでちゃんと伝えてきなさい、自分の気持ち》

「うん……ありがとう千歳、なんだかあたし頑張れそう」

千歳の励ましに思わず顔がほころぶと、それに応えるように明るい声が返ってきた。

《そうだよっ、頑張って!! ……ていうか那智、あんたそんなに高遠先輩が好きだったんだねー……》

「え、っ……」

携帯越しに聞こえた千歳の嬉しそうな声に、あたしは一瞬で赤くなる。

それを勘付かれないように俯いてみるけど、……携帯越しではそんな事、無意味だという事に気付く余裕がなかった。

自分が無意味でバカな事をしていると気付いたのは、千歳に笑われてから……。

《あははっ、那智あんた今結構焦ってるでしょ?》

「別にっ、焦ってなんて……」

《ほらその否定、それが焦ってる証拠よ!!》

なんだかもっともな事を言われたようで、あたしは返す言葉が出なかった。

すると千歳は一度咳払いをして、つと、もう一度あたしに励ましの言葉を伝えてくれた。

《とにかく、好きだと思う気持ちがあるならきっと大丈夫だよ。だから頑張って、……まぁ正直頑張らなくても平気だとは思うけどね!》

「っ、またそう言う……。千歳の言葉ってすごく嬉しいけど、なんていうか緊張感みたいなのがないんだよね……」

《えー、そう言う? 那智ったら毒舌ー、毒舌反対っ!》

小さく呟いたあたしの言葉に、千歳は明るく笑いながらそう言った。

それから少し普通の会話をして、だいぶ時間が経ってしまっていた事に気付いた千歳が、それをあたしに問いかける。

《……ねぇ、そろそろ電話切らなくて大丈夫?》

「……え?」