「だったらっ……好きなのに、受け入れてもらえない哀しさも、わかるんじゃないんですか……っ?」

“傷付けられる側”

それは好きなのに、相手に受け入れてもらえない側。

想いを受け入れてもらえない哀しさがわかるのなら、どうしてあたしを突き離すの……?

『自分が傷付ける側になって、初めて気付いたんだ。一途に想われれば想われる程、傷付ける側の俺も傷付いた感じがしたから……』

あたしと目を合わせてくれない高遠先輩は、小さくそう言うと腕に絡み付いているあたしの腕を外しにかかった。

「っ……どういう、意味ですか……?」

それに反抗しながら問いかけると、動きを止めた高遠先輩はゆっくりとあたしに目を向けた。

『……君を傷付ける事で、傷付いた君を見て……俺は後悔して、君を傷付けた事で傷付いたんだ』

「……っ、え?」

少し複雑な言葉に混乱してあたしが小首をかしげると、高遠先輩は少し笑ってもう一度、わかりやすく答えてくれた。

『はは……わかりにくいよね……。つまり簡単に言うと、君を傷付けて酷く後悔した、という事だよ』

「そ、れは……」

『自分で張った罠に自分で引っ掛かった、という感じなのかな……』

自嘲気味に笑いながらあたしから顔を反らす高遠先輩が、少し震えている事に気付いて、あたしは絡み付いていた腕を離した。

「……それは、やっぱりあたしが悪いんですよね……っ? あたしが、……あたしが好きになったからっ、だから先輩が傷付いたって……そういう事ですよね……!?」

あたしに背中を向けた高遠先輩を見上げてそう問うと、ただ首を横に振るだけで……何も言ってくれない。

「っ……やっぱり、そうなんですね……」

答えをもらえない事に哀しくなって、あたしも自嘲気味に笑うと、つと……ポツリと、呟きが聞こえた。

『君を好きになった、俺が悪い……』