あたしの言葉を聞くと、高遠先輩は困ったように笑ってあたしの頭の上に手を乗せた。

大きくて優しい高遠先輩の温かい手は、あたしに少しの安心感を与える。

『……那智、君は一番肝心な事に気付いていないんだね』

なだめるようにあたしの頭を撫で、優しく笑う高遠先輩を見上げると。

『那智、俺は君を、……ちゃんと想っているよ?』

「……え?」

困ったように、少し頬を赤らめてそう言った高遠先輩に驚いて、あたしは瞬きも出来なかった。

高遠先輩が、あたしを想っている……?

え、えぇっ……それって、好きって感じの想い……?

……いや、嘘、そんなはずない……、だって、そしたらだってっ……

『だから、君を傷付ける事に抵抗が出来たんだ。……でもね、だからこそ俺は君と一緒にいられない、……いや、正確には一緒にいたくないんだ……』

「っ……な、んで……!?」

少しでもあたしを想ってくれているのなら、あたしは貴方の傍にいたい。

傍にいさせて欲しい。

なのにどうして貴方は、一緒にいられないなんて言うの……!?

『なんで、って……言っただろう、俺は君が大切だから別れるって。俺は、君の気持ちがわかるから……』

瞳を伏せてそう言うと、高遠先輩はあたしの頭を撫でていた手をおろした。

『過去の経験からね、傷付けられる側の気持ちが俺には痛い程わかるんだ。……だからだよ?』