「だから……あたしが悪いからっ……、離れて、いかないでくださいっ……!!」
驚く高遠先輩の腕に絡み付き、離れていってしまわれないように力を込める。
溢れた涙が高遠先輩のブレザーの袖を濡らしてしまったけど、気にする余裕なんてなかった。
ただ、高遠先輩を繋ぎ止める事に必死で……。
『那智、謝らないで、君は悪くない……。どう考えても悪いのは俺だけだから……』
「ち、がうっ、……たしかに先輩は、あたしを傷付けて、突き離した……っ」
『そうだよ、だから……』
「でもっ……! ……忘れなかった、……離れなかった……。先輩の言う事を聞かなかった、あたしがっ、悪いんです……っ」
高遠先輩は、何度もあたしに別れを告げた。
あたしのためだと言って、何度も……。
それなのにあたしは聞き分けなく、自分の気持ちに正直に答えて、高遠先輩から離れないと決めた。
高遠先輩の傷を癒やすと心に決めて、勝手に離れたくないと言い続けた……。
――でもそれは、いつか高遠先輩があたしの想いを受け止めてくれると信じていたから。
なのにそれが逆に高遠先輩を苦しめていたなんて、思いもしなかった……。
「……あたしは、先ぱい、がっ……すきです……っ」
『でも那智、俺は……』
「今はいいですから……! ……今はまだ、好きになってくれなくても、いいからっ……」
だから傍にいては、だめですか?
突き離す事ばかりじゃなくて、あたしに貴方を待つという選択を、させてはくれませんか……?